人材紹介は労働集約的なビジネスであるため、売上を伸ばそうとすると単純に人を増やす発想になりがちです。しかし採用や育成にはコストと時間がかかるため、既存メンバーの一人当たり生産性を上げることは、増員以上に即効性のある成長のレバーになり得ます。

一人当たり生産性は、単に「頑張って働く時間を増やす」ことでは上がりません。業務時間の使い方を可視化し、ノンコア業務を削減・自動化し、集中して案件に向き合う時間を確保し、必要に応じて分業を取り入れる。そして決定数だけでなく決定単価という側面からも生産性を捉える。この記事では、こうした打ち手を整理して解説します。

生産性を分解する:一人当たり決定数と決定単価

一人当たり生産性は、次の式で捉えると打ち手を考えやすくなります。

一人当たり売上 = 一人当たり決定数 ×平均決定単価

決定数を増やすアプローチと、決定単価を上げるアプローチは、必要な打ち手がまったく異なります。決定数を増やすには行動量や転換率の改善(この点は人材紹介のKPI設計を参照してください)が中心になりますが、決定単価を上げるには、担当する求人の理論年収や手数料率の水準そのものを見直す必要があります。生産性向上を考える際は、この2つの軸のどちらに課題があるのかを先に切り分けることが出発点です。

業務時間の使い方を可視化する

生産性改善の第一歩は、今の業務時間が何に使われているかを可視化することです。人材紹介の業務は、求職者面談・企業商談といった「コア業務」と、日程調整・書類作成・データ入力といった「ノンコア業務」に分けられます。多くの現場では、体感以上にノンコア業務に時間が取られており、可視化して初めてその比率の高さに気づくことが少なくありません。

1〜2週間程度、業務内容を簡単なカテゴリ別に記録してみるだけでも、どこに時間が偏っているかが見えてきます。可視化なしに「もっと効率化しよう」と言っても、具体的にどこを削るべきかが分からないままになってしまいます。

可視化の粒度は、細かすぎると記録自体が負担になり継続しません。「求職者面談」「企業商談」「日程調整」「書類作成」「社内会議」「その他事務」といった5〜6カテゴリ程度に絞り、15分単位程度のざっくりとした記録で十分です。まずは自分自身の1週間を記録してみて、想定していたよりもノンコア業務に時間を取られている実態に気づくところから始めるとよいでしょう。

ノンコア業務の削減と自動化

業務時間の可視化で見えてきたノンコア業務のうち、定型化できるものは自動化や仕組み化の対象になります。日程調整の自動化、推薦文・求人票のテンプレート化、リマインドの自動送信などが代表例です。

自動化の対象を選ぶ際は、「頻度が高く、かつ判断を伴わない業務」から着手すると効果が出やすくなります。判断が絡む業務(候補者への提案内容の検討など)は自動化しにくいため、無理に自動化しようとせず、判断業務にかける時間を確保するために周辺の定型業務を削るという発想が現実的です。ノンコア業務を減らすための案件管理の整備については、案件管理の仕組みでも扱っています。

自動化を進める際にありがちな失敗は、最初から高機能なツールを導入しようとして、かえって定着に時間がかかってしまうことです。まずは既存の業務フローの中で明らかに手作業が無駄になっている箇所(たとえば候補者への同じ内容のリマインドメールを毎回手打ちしているなど)から、テンプレートや簡単な自動送信の仕組みを試してみるところから始めると、小さな成功体験を積み重ねながら定着させやすくなります。

集中時間の確保:面談・商談以外の時間をどう守るか

生産性を左右するもう一つの要素は、集中して考える時間をどれだけ確保できるかです。面談・商談・電話対応が一日中細切れに入っていると、推薦文の作成や求人内容の深い理解といった、まとまった思考が必要な業務の質が下がります。

具体的な工夫としては、面談・商談の時間帯をあらかじめブロックしてまとめる、社内会議や確認作業の時間帯を固定して「差し込み」を減らす、といったスケジューリングの工夫が有効です。個人の努力だけでなく、チーム全体で会議の入れ方のルールを決めることで、集中時間を組織的に守りやすくなります。

分業による生産性向上

両面型(一人が求職者対応と企業対応の両方を担う体制)は、情報連携のロスが少ない一方、一人あたりの業務範囲が広く、生産性の天井が見えやすいという特徴があります。案件数が増えてきた組織では、RA・CAで役割を分ける分業型に移行することで、それぞれが得意な業務に集中でき、一人当たりの処理件数を増やせる場合があります。

ただし分業化には、RA・CA間の情報連携という新たな課題も生まれます。分業に移行する際は、情報共有の仕組みを同時に整えないと、生産性向上どころか連携ミスによる歩留まり悪化を招くこともあるため注意が必要です。未経験メンバーが分業体制の中でどう育っていくかについては育成の設計も参考にしてください。

組織の規模によっては、完全な分業ではなく、一部の業務だけを切り出す部分的な分業も選択肢になります。たとえば求人ヒアリングは経験豊富なRAが担当し、日程調整や書類の一次チェックはアシスタント的な役割のメンバーが担当するといった形です。全面的な体制変更に踏み切る前に、一部の定型業務だけを切り出せないかを検討してみると、移行のリスクを抑えながら生産性向上の効果を確かめられます。

単価向上という生産性改善の視点

生産性向上というと業務効率化ばかりに目が向きがちですが、決定単価を上げることも同じくらい重要な打ち手です。理論年収が高いポジションや、手数料率の交渉余地がある独占求人に注力する、専門性の高い領域に特化して単価の高い案件を扱えるようにする、といったアプローチが考えられます。

単価向上は、日々の業務効率化とは異なるレイヤーの意思決定であり、どの求人カテゴリに時間を配分するかという、マネージャーレベルでの判断が必要になります。この点はマネージャーの役割とも密接に関わってきます。単価の低い求人ばかりを数多くこなす体制から、単価の高い求人に絞って深く関わる体制へと切り替える場合、短期的には決定数が減って見えることもあるため、一人当たり売上という指標で評価しないと、現場が単価向上の取り組みに二の足を踏んでしまう点にも注意が必要です。

まとめ

人材紹介の生産性向上は、一人当たり決定数と決定単価という2つの軸に分解して考えることが出発点です。業務時間を可視化してノンコア業務を自動化し、集中時間を確保し、必要に応じて分業を取り入れる。そして単価の高い求人領域への配分を見直す。これらを組み合わせることで、増員に頼らずに一人当たりの成果を底上げしていくことが可能になります。